管理会計を導入しましょう
中小企業の管理会計とは、経営者や管理者が意思決定や業績管理に役立つ会計情報を提供することです。
管理会計は、財務会計や税務会計とは異なり、社外に報告する必要がなく、企業独自のルールや目的に応じて柔軟に設定できます。管理会計の手法には、損益分岐点分析、予実管理、部門別会計などがあります。
管理会計は、中小企業の経営力を高める守破離の経営には必須の重要なツールです。
管理会計導入の効果
管理会計は中小企業の経営に多くのメリットをもたらします。管理会計は難しくて面倒なものではありません。自社に合った方法やツールを選び、簡単に始めることができます。
①経費の削減
管理会計では、原価計算や予算管理などを行うことで、無駄な経費の発生を防ぎ、コスト削減の効果を測定できます。
収益の増加:管理会計では、製品やサービスの価格設定や販売戦略などを分析することで、収益性の高い商品や顧客を見つけ出し、売上の向上につなげることができます。
②キャッシュフローの改善
管理会計では、在庫や債権などの資産の管理や回収を行うことで、キャッシュフローの状況を把握し、資金繰りの改善に努めることができます。
③競争力の強化
管理会計では、市場や競合他社の動向を調査することで、自社の強みや弱みを明確にし、競争優位性を高めることができます。
③イノベーションの促進
管理会計では、新規事業や投資案件などの評価や選択を行うことで、将来的な成長機会を見極め、イノベーションに挑戦することができます。
社員の自律への訓練の場(機会原価の教育)
守破離で離の段階は自律した社員です。そこでは、判断も委譲されます。その訓練の場が必要となります。管理会計上の用語ですが、機会原価の教育こそ、自律への教育となります。
①機会原価とは
機会原価とは、ある選択肢を選んだことによって失われた、他の選択肢がもたらしたであろう利益のことです。
例えば、ある商品を生産するために使った資源が、別の商品を生産するためにも使える場合、その資源を使ったことで失われた別の商品の利益が機会原価になります。機会原価は、経営者や管理者が意思決定や業績管理に役立つ会計情報の一つです。
②あらゆる判断で活用する
上記の説明では分かり難いのですが、判断にあたっては必ず複数の選択肢から根拠をもってひとつの答えを選択するということです。社長は思いつきで動いているようですが、責任も重い事から自ずと複数案から選択する習慣がついています。
同じことを社長の片腕は出来る様にならねばなりません。社長に依存する体質が出来ていると一案だけで「社長、お願いします」という習慣がつき、社長の不満につながり中小企業病を発症していく原因に繋がっていきます。
小さな物品の購入稟議に際しても必ず相見積を要求し比較検討した結果で申請させる習慣をつけていかねばなりません。
機会原価の計算のステップ
①比較対象となる2つ以上の選択肢を設定する。
②それぞれの選択肢における売上高や費用などの収益やコストを算出する。
③それぞれの選択肢における利益(収益からコストを引いたもの)を求める。
④最も利益が高い選択肢を基準とし、他の選択肢との利益差を計算する。
⑤この利益差が機会原価となる。
⑥機会原価を考慮した上で、最終的にどの選択肢を採用するか決める。
下記は簿記1級の問題です。これが正しく正解出来る社員がいれば社長は3刀流のスーパープレイヤーから卒業し監督業に専念出来る様になります。
問題:
A氏は個人事業主である。 「A氏の事業に関する資料」と「市場の利子率」「A氏の推定年 収」は次のとおりである。 事業の年間売上高:140,000,000円 諸費用:100,000,000円 当期純利益:40,000,000円 無利息での市場利子率:2% A氏が事業と同等の労働条件で働きに出た場合の推定年収:12,000,000円 なお、今後も安定して同様の状況が期待されると仮定できる。 また、税金は無視するもの とする。 この状況の中、投資家から1,000,000,000円で事業を買収したいという申し入れがあった。 この申し入れを受けるべきか答えなさい。
解答:
比較対象となる2つの選択肢は、事業を続けるか(選択肢A)、事業を売却して働きに出るか(選択肢B)です。
選択肢Aでは、売上高は140,000,000円、諸費用は100,000,000円、当期純利益は40,000,000円です。 選択肢Bでは、売上高は0円、諸費用は0円、当期純利益は0円ですが、代わりに事業売却益として1,000,000,000円と働きに出た場合の年収として12,000,000円が得られます。
選択肢Aでは、利益は40,000,000円です。 選択肢Bでは、利益は1,012,000,000円です。
最も利益が高い選択肢はBなので、これを基準とします。 選択肢AとBとの利益差は972,000,000円(1,012,000,000 - 40,000,000)です。 これが機会原価となります。つまり、事業を続けることで得られたであろう972,000,000円の利益を失っていることになります。
機会原価を考慮した上で、最終的にどの選択肢を採用するか決めます。この場合、機会原価が非常に大きいことから、事業を売却して働きに出る方が合理的と判断できます。したがって、投資家からの申し入れを受けるべきです。